2025(令和7)年度の手話通訳者全国統一試験。受験したのは2,059人で、合格したのは171人でした。

8.31% 受かったのは、およそ12人に1人 2025(令和7)年度 手話通訳者全国統一試験
受験 2,059人 → 合格 171人

結論から言うと、統一試験が始まった2001年度から2025年度までの25年間で、合格率が1桁になった年はほかに一度もありません。それまでのいちばん低い年でも11.77%(2014年度)。8.31%は、そこからさらに3ポイント以上下です。

しかも同じ年に受験者数は過去最多を更新しています。過去最多の受験者数の年が、一番合格率が低かったのです。

8.31%令和7年度の合格率
(25年で唯一の1桁)
2,059人受験者数
(25年で最多・初の2,000人超)
171人合格者数
(前年度は333人)

→ 令和7年度に何が起きたのかだけ読む→ 25年分の一覧表を見る

ちなみに「統一試験は都道府県ごとに実施しているから全国の合格率なんて出ていない」——ネット上にはそう書かれたページがいくつもありますし、恥ずかしながら当サイトの別記事にもわたしが同じことを書いていました。

ですが、しっかりと調べたところ、公式の資料から確認を取ることができました。全国集計は毎年きちんと公表されていて、しかも2001年度までさかのぼれる一覧表まで公開されています。どの資料のどこに載っているかもこの記事で示します。

この記事では、その一次資料から25年分の申込者数・受験者数・合格者数・合格率をすべて並べます。数字の出どころも、ネット上に出回っている表との食い違いも、隠さずに書きます。

全国の数字はどこにあるのか

統一試験は、社会福祉法人 全国手話研修センターが問題をつくり、各都道府県・政令指定都市の聴覚障害者関連団体が実施主体となって行う試験です。合格発表も各実施団体が行います。この構造のせいで「全国の合格率は誰も集計していない」と思われがちです。

ところが、研修センターは社会福祉法人です。社会福祉法人には事業報告書を公表する義務があり、研修センターも毎年6月ごろに 「◯◯年度 事業報告書」 をPDFで自サイトに掲載しています。統一試験の数字はその本文にはっきり書かれています。

数字が載っている場所

・本文「第2部 福祉事業報告/人材養成事業/第2節 自主事業/1. 手話通訳者全国統一試験」に、その年度の申込者数・受験者数・合格者数・合格率が前年度との比較つきで書かれています。

・2021(令和3)年度版までは、巻末の資料編に「地域別合格者数 一覧」という表があり、2001年からの受験者数・合格者数・合格率が全部そろっています。この記事の2001〜2021年度は、この表が出典です。

・2022(令和4)年度以降に公開されているPDFは本文のみで、資料編が付いていません。そのため都道府県別の数字は2021年度が最後になります(後述)。

【訂正のお知らせ】 当サイトの記事「【2026年版】手話通訳者全国統一試験とは?」でも、以前は「合格率は公式には一般公開されていません」と書いていました。今回、公式の資料から確認を取ることができたため、当該記事もあわせて訂正しました。

ちなみに統一試験そのものは2001年に始まりました。研修センターの設立準備室が実施したのが最初だと、事業報告書に記されています。この記事の表が2001年から始まっているのは、そこが起点だからです。

25年分の全国データ(一覧表)

2001〜2025年度の全国集計です。申込者数は、公表されている年度のみ記載しています。

年度申込者数受験者数合格者数合格率
平成13(2001)38710928.17%
平成14(2002)61822035.60%
平成15(2003)62115625.12%
平成16(2004)83922727.06%
平成17(2005)89428031.32%
平成18(2006)1,09333230.38%
平成19(2007)1,45525117.25%
平成20(2008)1,42040328.38%
平成21(2009)1,49517711.84%
平成22(2010)1,58442827.02%
平成23(2011)1,50748632.25%
平成24(2012)1,47124216.45%
平成25(2013)1,55427717.82%
平成26(2014)1,50417711.77%
平成27(2015)1,61829218.05%
平成28(2016)1,71324714.42%
平成29(2017)1,80023212.89%
平成30(2018)1,8751,76231617.93%
令和元(2019)2,0141,88137720.04%
令和2(2020)1,4571,34828220.92%
令和3(2021)1,5311,44429520.43%
令和4(2022)1,6671,53528118.31%
令和5(2023)1,7771,69025615.15%
令和6(2024)1,9621,85233317.98%
令和7(2025)2,1812,0591718.31%
累計(25年)35,1446,84719.48%

色つきの行は、25年間で合格率がもっとも低い年度(2025年度・8.31%)ともっとも高い年度(2002年度・35.60%)です。

35,14425年間の延べ受験者数
6,84725年間の延べ合格者数
19.48%25年通算の合格率

25年間で約3万5千人が受験し、約6,800人が合格しています。通算の合格率はおよそ5人に1人です。

グラフで見る推移

受験者数(左軸・人) 合格率(右軸) 0 600 1,200 1,800 2,400 0% 10% 20% 30% 40% 2,059 35.60% 8.31% 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 2019 2021 2023 2025 年度(西暦)

図は横にスクロールできます。「拡大して見る」で全体を大きく表示できます。

手話通訳者全国統一試験 受験者数と合格率の推移(2001〜2025年度)(全国手話研修センター 事業報告書より作成)

ひと目でわかるのは、最初の6年と、その後とではまるで別の試験に見えるということです。2001〜2006年度は25〜35%台。受験者数もまだ400〜1,100人規模でした。

それが2007年度に受験者1,455人へと一気に増え、合格率は17.25%へ下がります。2007年度以降の19年間で20%を超えたのは6年度だけ。残りはほぼ10%台に収まっています。母数が増えたぶん、合格率の水準そのものが一段下がった格好です。

合格者数(人) 0 100 200 300 400 500 486 171 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 2019 2021 2023 2025 年度(西暦)

図は横にスクロールできます。「拡大して見る」で全体を大きく表示できます。

合格者数の推移(2001〜2025年度)(全国手話研修センター 事業報告書より作成)

合格者数で見ると、ピークは2011年度の486人。そこから振れ幅は大きいものの、200〜400人あたりを行き来しています。そのなかで2025年度の171人は、2001年度(109人)・2003年度(156人)に次ぐ少なさです。ただしその2年は受験者がそれぞれ387人・621人しかいなかった年で、2,000人が受けた年の171人という組み合わせは25年間でほかにありません。

令和の8年間を細かく見る

申込者数まで公表されている2018(平成30)年度以降は、もう少し細かく追えます。申込んだのに受けなかった人の割合(欠席・辞退率)も出しました。

年度実施団体申込受験欠席・辞退率合格合格率
平成30(2018)50団体(46都道府県・4政令市)1,8751,7626.0%31617.93%
令和元(2019)50団体(46都道府県・4政令市)2,0141,8816.6%37720.04%
令和2(2020)49団体(44道府県・5政令市)1,4571,3487.5%28220.92%
令和3(2021)51団体1,5311,4445.7%29520.43%
令和4(2022)51団体(46都道府県・5政令市)1,6671,5357.9%28118.31%
令和5(2023)51団体(46都道府県)1,7771,6904.9%25615.15%
令和6(2024)51団体1,9621,8525.6%33317.98%
令和7(2025)52団体(全都道府県)2,1812,0595.6%1718.31%

欠席・辞退率はおおむね5〜8%で、年度による大きな変動はありません。つまり「申込だけして受けない人が急に増えた/減った」という要因では、合格率の動きは説明できません。

受験者数のほうは動きが大きく、コロナ禍の2020年度に1,348人まで落ち込み、そこから5年かけて回復し、2025年度に2,059人と過去最多を更新しました。一方で合格率は2020年度の20.92%から2025年度の8.31%へ、ほぼ一本調子で下がっています。

令和7年度に何が起きたのか

2025(令和7)年度は、記録が同時に4つ動いた年でした。

① 申込者数 2,181人(過去最多)
② 受験者数 2,059人(過去最多・初の2,000人超)
③ 合格率 8.31%(25年で唯一の1桁)
52団体・全都道府県で実施(事業報告書で確認できる範囲では初めて。研修センターが長年かかげてきた目標の達成)

前年度と比べると、受験者は207人増えたのに、合格者は333人から171人へ162人減りました。母数が増えて合格者が半減した形です。

合格率が1桁になったのは、確認できる25年間でこの年度だけです。それまでの最低は2014(平成26)年度の11.77%、次いで2009(平成21)年度の11.84%でした。8.31%はそこからさらに3ポイント以上低い水準です。

理由について、研修センター自身は2023年度の事業報告書で、合格率の低下傾向にふれてこう書いています。コロナ禍の影響で手話でコミュニケーションする機会が減ったこと、集団での学習が十分に積めていないことが原因として考えられる、と。

もうひとつ、制度側の変化もあります。実技試験は2020年度から場面通訳のみになりました。それ以前にあった「手話による要約」は、場面通訳と筆記試験の「国語」に振り分けられて充実が図られた、と事業報告書に記されています。試験の中身そのものが2020年度に切り替わっている点は、頭に置いておきたいところです。

ただし、単年の数字だけで「試験が難化した」と結論づけられません。合格率は受験者層の変化(新しい層が入ってくれば下がりやすい)でも、採点基準の運用でも動きます。全都道府県での実施が実現して受験者が過去最多になった年に合格率が最低になった。まずはその事実の並びだけ知っていただければと思います。

参考:手話通訳士試験と並べてみる

統一試験とよく比べられるのが厚生労働大臣公認の手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)です。こちらは社会福祉法人 聴力障害者情報文化センターが実施しており、第1回からの推移が公表されています。同じ年度どうしで並べてみました。

年度統一試験
合格率
手話通訳士試験
(回)
士試験
合格率
令和元(2019)20.04%第30回9.8%
令和2(2020)20.92%第31回11.0%
令和3(2021)20.43%第32回9.6%
令和4(2022)18.31%第33回13.3%
令和5(2023)15.15%第34回12.2%
令和6(2024)17.98%第35回5.5%
令和7(2025)8.31%第36回11.2%

色つきの行は、士試験の合格率のほうが統一試験より高かった年度です。

令和7年度は、統一試験(8.31%)が士試験(11.2%)を下回りました。ただしこれは初めてのことではありません。過去にも2007・2009・2010・2012・2014年度などで、士試験のほうが高い年がありました。「士試験のほうがつねに難しい」というのは数字の上では成り立ちませんでした。

単純比較はできません。両者は受験資格も受験者層も違います。士試験は全国4会場(埼玉・東京・大阪・福岡)で行われ、すでに通訳経験を積んだ人が多く受けます。統一試験は養成課程を修了した人が地元で受ける試験です。

この数字を読むときの注意

分母は「受験者数」であって申込者数ではない

公表されている合格率は、合格者数 ÷ 受験者数 です。申込者数で割ると数ポイント低い値になります。上の一覧表は25年分すべて、合格者数 ÷ 受験者数 が公表されている合格率と一致します。

「全国」といっても実施していない県がある年がある

2020(令和2)年度は東京都と静岡県がコロナ禍で実施を見送り、49団体での実施でした。大阪府は長く独自の登録試験制度をとっており、統一試験を利用していませんでした(政令市の堺市は実施)。つまり全国合格率はその年に実施した団体の合計です。年度をまたいで比べるときは、この点に幅があることを含んで読む必要があります。

ネット上に出回っている表と食い違う箇所がある

統一試験の合格率一覧は、出典を示さないままいくつかのサイトに掲載されています。多くの年度は事業報告書と一致するのですが、令和2(2020)年度だけ食い違います。よく見かける表では合格266人・19.73%となっていますが、事業報告書の資料には合格282人・20.92%とあります。しかも同じ資料の都道府県別の合格者数を合計すると282人になり、内訳と総計が一致します。この記事では事業報告書の値を採用しました。

都道府県別は2021年度までしか公開されていない

2021年度版までの事業報告書には、都道府県・政令市ごとの「申込者数/辞退者・欠席者数/受験者数/合格者数」の一覧が付いていました。県別の合格率を出せるのはこの年度までです。2022年度以降に公開されているPDFは本文のみで資料編がないため、直近4年分の県別データは公開されていません。

誰でも受けられる試験ではない

受験者数は「手話通訳者になりたい人の数」ではありません。全国手話研修センターの手引きが挙げる受験対象者は、「手話通訳者養成課程修了者」「養成課程修了者と同等の知識及び技術を有する者」の2つだけです。まず養成課程に入れた人でなければ、受験の入口に立てません。

そのうえ、どこまで絞るかは実施団体ごとに違います。たとえば神奈川県聴覚障害者福祉センターの2026(令和8)年度の案内では、県域での手話通訳活動を希望し、合格後に県と市町村へ登録して活動することを前提としたうえで、「本年度当センター主催の養成コース修了者(見込み含む)」か、「18歳以上で手話通訳者養成課程修了者(統一試験導入地域に限る)または国リハ等の専門校卒業者で、横浜市・川崎市を除く県域に在住(要証明)」のいずれかに限っています。

つまり受験者数の上限は、その地域の養成課程を修了した人数でほぼ決まります。合格率を「試験の難しさ」だけの指標として読めないのは、この入口の細さも理由です。

県別のデータについては分量が多いので、別記事にまとめました。累計合格者数のトップは東京都ではなく兵庫県で、人口10万人あたりで見ると順位はほとんど入れ替わります。

累計合格者数トップは、東京ではなく兵庫県 ── 統一試験 都道府県別データ21年分

合格したあと、報酬はどうなっているか

統一試験に合格して登録通訳者になると、派遣のたびに報酬が支払われます。この金額は自治体ごとに決められていて、同じ2時間の派遣でも地域によって違いがあります。市区町村ごとの実際の金額を、要綱などの一次資料をもとに地図にまとめています。

手話通訳報酬マップを見る →

出典

この記事の数字は、すべて以下の一次資料から取っています。

  • 社会福祉法人 全国手話研修センター「2025年度 事業報告書」
    2025年度事業報告書(PDF)(令和7年度の申込・受験・合格・合格率)
  • 同「2024年度 事業報告書」「2023(令和5)年事業報告書」「2022(令和4)年事業報告書」(令和4〜6年度)
  • 同「2021(令和3)年度 事業報告書」資料2・資料2-2
    2021年度事業報告書(PDF)(2001〜2021年度の受験者数・合格者数・合格率、都道府県別合格者数)
  • 同「2020(令和2)年度 事業報告書」資料4-1
    2020年度事業報告書(PDF)(令和2年度の都道府県別内訳、実技試験の変更)
  • 同「2019(令和元)年度 事業報告書」(平成30・令和元年度の申込者数)
  • 社会福祉法人 全国手話研修センター「2026年度 手話通訳者全国統一試験の手引き」(受験対象者・試験科目。実施団体が配布する資料)
  • 神奈川県聴覚障害者福祉センター「2026(令和8)年度手話通訳者全国統一試験 受験の案内」(実施団体ごとの受験資格の例)
    神奈川県聴覚障害者福祉センター お知らせ(2026年8月21日閲覧。募集期間中のみの掲載と思われるため、時期によっては開けません)
  • 全国手話研修センター 情報公開ページ
    https://www.com-sagano.com/center/
  • 社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)申込者数・受験者数・合格者数等の推移(第1回〜第36回)」
    試験結果データ

※ 2022年度以降の事業報告書はスキャンPDFのため、本文の数値を目視で確認したうえで転記しています。数字の誤りにお気づきの方は、お問い合わせからご指摘いただけると助かります。

筆記試験の対策に使えるもの

昨年度は合格率が過去最低でしたが、統一試験は筆記と実技の両方で基準を満たす必要があり、このうち筆記は出題範囲がはっきりしているぶん、対策の効果が見えやすい分野です。

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まとめ

手話通訳者全国統一試験の全国合格率は、毎年きちんと公表されています。場所は全国手話研修センターの事業報告書です。

25年分を並べると、令和7年度の8.31%は確認できる期間で唯一の1桁でそれまでの最低(2014年度11.77%)を大きく下回っています。同じ年に受験者数は過去最多となり、事業報告書で確認できる範囲では初めて全都道府県で実施されました。

ただしこれは一つの読み方です。
試験の合格率は受験者層や制度変更でも動きますし、地域差・個人差もあります。「難化した」と断じるのではなく、まず事実の並びを共有したい、というのがこの記事の趣旨です。

数字の誤りや別の資料をご存じの方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームからお知らせください。記事に反映させていただきます。