反射神経テストというと、たいていは「みどりになったら押す」の1種類です。うちのツールもそうでした。それを7つのモードに増やしたので、それぞれ何を測っているのかを書いておきます。

増やしたのは、機能を足したかったからではありません。1つの数字では、速いか遅いかしか分からないからです。同じ「反応が遅い」でも、合図に気づくのが遅いのか、どっちに動くか決めるのが遅いのか、止まるべきときに止まれないのかで、まったく別の話になります。

1つのモードでは、何が遅いのか分からない

反応時間は、ひとつの能力ではありません。合図に気づく時間、どう動くか決める時間、実際に体が動きだす時間が足し算になっています。この分け方は古くからあるもので、19世紀の Donders が提案した減算法──課題を少しずつ複雑にして、その差から中間の処理にかかる時間を取り出す──が元になっています。

いまの研究でも同じ手続きが使われています。18〜65歳の1,466人に、単純に押すだけの課題と、見分けてから押す課題を同じ日に両方やってもらった研究では、単純反応が平均231ミリ秒だったのに対し、選択反応は最年少の群で476ミリ秒、最年長の群で595ミリ秒でした。この差にあたる「中枢処理時間」は平均319ミリ秒で、加齢による遅れの8割以上をこの部分が説明したと報告されています。

同じ人たちに、同じ日に両方やってもらった結果 単純反応 231 ms 選択反応 18–24歳 476 ms 選択反応 59–65歳 595 ms 気づいて押すまで 見分けて決める時間 Woods ら (2015) の2本の論文より作成。単純反応 1,469人、選択反応 1,466人の平均値。 装置の遅れを補正すると、単純反応は213ミリ秒になります。
足された部分が「決める時間」です。ここは課題の作り方で大きく変わります

つまり、モードを分けるというのはこの足し算のどこを見るかを切り替えるということです。以下、7つを順に説明します。

クラシック ── 単純反応時間だけを取り出す

画面が緑になったら押す。それだけです。判断がほとんど要らないので、合図に気づいてから体が動くまでの時間に近いものが出ます。

クラシックモードの結果画面。「みどりに なったら すぐタップ!」の説明の下に、199 ミリびょう という記録が大きく表示されている
クラシックモード。押した瞬間からのミリ秒だけが出ます

目安になる値として、較正した装置で18〜65歳の1,469人を測った研究の平均が231ミリ秒(装置の遅れを補正すると213ミリ秒)でした。この研究では、指タッピング課題から求めた運動開始のぶんを差し引いた「刺激検出の時間」は平均131ミリ秒で、こちらは加齢の影響を受けませんでした。歳をとって遅くなるのは、気づく側ではなく体を動かす側だった、ということになります。

「0.2秒が平均」という言い方をよく見かけますが、値は装置と測り方でかなり動きます。ブラウザで測る以上、画面の書き換えと入力の取り込みにかかる遅れが必ず乗ります。他人の数字と比べるより、同じ端末での自己ベストを目安にしてください。

おとだけ ── 画面を見ないで測る

合図を音だけにしたモードです。画面を見る必要がないので、目を閉じたままでも、画面から目を離していてもできます。

音への反応は、光への反応より速く出ます。同じソフトで両方を測った研究(医学生120人)では、男女ともに聴覚反応時間が視覚反応時間より有意に短いという結果でした。陸上のスタートを力センサーで調べた研究では、9人中5人が少なくとも1条件で平均100ミリ秒を下回っています。

ただし、このモードを入れた理由は速さの比較ではありません。画面が見えにくい方でも同じ課題ができるようにするためです。視覚の合図しかないテストは、それだけで「測れない人」を作ります。

いろだけ ── 音とバイブを使わないで測る

おとだけの逆です。音も振動も使わず、色と記号の変化だけで合図を出します。

色の変化は、色覚のタイプによっては分かりにくいことがあります。そこでこのモードでは色だけに頼らず、形の変化も同時に起こしています。白黒でも判別できるようにしてあるので、色の見え方に関わらず同じように使えます。

「おとだけ」と「いろだけ」を両方そろえたのは、どちらか一方が使えない人がいるからです。どちらのモードでも記録は別々に残るので、自分が使いやすいほうで続けられます。

フェイント ── 「押さない」ほうを測る

ニセの合図が混ざります。本物の合図では押し、ニセの合図では押してはいけません。

フェイントモードの画面。青い背景に「ダメ!おしちゃダメ!」の文字と、腕で×をつくる人のイラスト
青はニセの合図です。ここで押すと記録になりません

これは速く押す課題とは別のものを見ています。反応を止める働きは、心理学では抑制(inhibition)と呼ばれ、専用の課題で調べられてきました。やっかいなのは、うまく止まれたときには反応が出てこないので、止まる速さを直接は観測できないことです。40人以上の研究者による合意ガイドでは、この潜時は潜在的な変数であり、モデルを使って推定するしかないと整理されています。

同じガイドは、「はじめから出さない」課題と「出しかけたものを打ち消す」課題は神経の基盤が部分的に違う可能性がある、とも述べています。このモードは前者に近い作りです。数字は反応時間として出ますが、意味あいは「速さ」より「うっかり押さないでいられるか」に寄っています。

みぎひだり ── 選ぶ時間が上乗せされる

矢印の向きを見て、対応する側を押します。クラシックとの差が、そのまま見分けて決めるのにかかった時間です。

みぎひだりモードの画面。緑色の画面が左右に分かれ、左側に左向きの青い矢印が表示されている
矢印を見てから、対応する側を押します。ここで「決める時間」が乗ります

選択肢が増えるほど反応時間が伸びることは Hick–Hyman の法則 として知られていて、いまも再現されています。ただし近年の研究は、刺激側の不確かさと反応側の不確かさが混ざっていたと指摘し、両者を分けると反応側の不確かさのほうが効いている場合があると修正を加えています。「見分けるのが大変」なのか「どっちの指を出すか迷う」のかは、別だということです。

クラシックとみぎひだりの記録を並べると、自分の場合どちらが重いかが見えます。差が小さければ判断は速く、差が大きければそこに伸びしろがあります。

動体視力 ── 一瞬を読む

一瞬だけ表示される数字を読み取ります。12ステージ制で、進むほど表示時間が短くなります。

動体視力モードの画面。「ステージ 1 / 12 250ms」の表示と、数字が消えたあとの空欄、そして「どれが でていた?」という問いと 60・61・59・50 の選択肢
ステージ1は250ミリ秒。似た数字から選ぶので、うろ覚えでは当たりません

ステージ4からは、数字が消えた直後に同じ場所へノイズ模様を短く重ねます。これは後方マスキングと呼ばれる現象を使ったもので、表示時間が同じでも見分けるのが一気に難しくなります。視覚マスキングの解説では、マスクの形がターゲットの輪郭に似ているほど妨害が強く、両者の間隔が30〜80ミリ秒あたりで最も強くなるとされています。先に出ているはずのものが、あとから出たものに邪魔される──直感に反するところが、この現象の核心です。

ステージ8から左右2か所に同時に出ます。両方を追おうとすると、たいてい両方こぼれます。視線を2つの中間に置いて、周辺視で受け取るほうが取れることがあります。

なお、ここで測っているものと眼科などで行う動体視力検査は方法が違います。動体視力は静止視力とは別の能力で、運動情報が別の経路を通ることが根拠として挙げられています。静止視力1.0以上の学生92人を調べた報告でも、動体視力の値は0.12〜1.30と大きくばらついていました。

「では鍛えれば上がるのか」については、まだ決着していません。大学野球部員に8週間のトレーニングを行った実験でも、中学生を対象とした後続研究でも向上しなかったと報告されています。一方で、剣道の習慣的な稽古が加齢による低下を抑える可能性には触れられています。このモードは、鍛えるためというよりいまどのくらい見えているかを確かめるためのものと考えてください。

ナンバータッチ ── 探して、指を運ぶ

1から25までの数字を順にタップします。合図を待つのではなく、目で探して指を運ぶことを繰り返す課題です。

ナンバータッチの画面。5×5のマスに1から25までの数字がばらばらに並び、上に「つぎは 1・2.9 びょう」と表示されている
数字はばらばらに並びます。探す時間と、指を運ぶ時間の両方がかかります

ほかの6つが「合図が来てから」を測るのに対して、これだけは自分のペースで進みます。目の動きと手の動きをつなぐところに時間がかかるので、反応時間とは別の傾向が出ます。休憩がわりに使う方が多いモードでもあります。

どれから始めればいいか

  • 初めてなら クラシック。ほかのモードの基準になります
  • 音が聞こえにくい・使えない場所なら いろだけ。音と振動を一切使いません
  • 画面が見えにくいなら おとだけ。目を閉じたままできます
  • ゲームの練習として使うなら みぎひだり → フェイント。判断と抑制が入ります
  • 球技をやっているなら 動体視力。ステージ4以降が本番です

実際にやってみる

7つのモードすべて、登録もインストールも要りません。記録はブラウザの中だけに保存されます。

反射神経テストを開く →

記録を比べるときに気をつけること

モードが増えたぶん、比べ方を間違えやすくなりました。3つだけ書いておきます。

結果画面。1かいめ199ms・2かいめ253ms・3かいめ224msの一覧、ちらばりを示す図、中央値224ms、最速199ms、平均225ms、そして「チーターきゅう!」の称号
結果画面。平均だけでなく、3回のちらばりと中央値も出します

1つめ。モードをまたいで比べない。クラシックとみぎひだりでは、そもそも足し算の項が違います。速い遅いを言えるのは同じモードの中だけです。

2つめ。端末をまたいで比べない。ブラウザで測る以上、画面の書き換えと入力の取り込みの遅れが乗ります。スマートフォンとパソコンの数字を並べても意味がありません。

3つめ。年齢の見方。成人7,130人のデータを解析した研究では、単純反応時間は50歳前後までほとんど遅くならないのに対し、選択反応時間は成人期を通じて遅くなり続けました。クラシックの記録が落ちていないのにみぎひだりだけ遅くなっている、というのは自然なことです。

まとめ

  • 反応時間は「気づく・決める・動く」の足し算なので、1つの数字ではどこが遅いのか分かりません
  • クラシックは単純反応、みぎひだりは選択反応。その差が「決める時間」です
  • フェイントが見ているのは速さではなく、押さないでいられるかのほうです
  • 動体視力モードのノイズは後方マスキングを使っています。同じ表示時間でも難しくなります
  • おとだけ・いろだけは、どちらかの感覚が使えなくても同じ課題ができるようにするためのものです
  • 比べるのは同じモード・同じ端末の中だけにしてください

「反射神経は鍛えられるのか」という一番大きい問いについては、別の記事で一次資料を追いかけて書きました。結論だけ先に言うと、素の反応の速さはほとんど変わりません。変わるのは、上の足し算のうち判断が入っている部分のほうです。

ここに書いたのは一つの考え方で、研究にも限界があります。反応時間の値は刺激の強さや装置によって変わりますし、紹介した研究には人数の多くないものも含まれています。お気づきの点があれば、お問い合わせフォームから教えていただけると助かります。

出典

単純反応時間・選択反応時間

  • Woods DL, Wyma JM, Yund EW, Herron TJ, Reed B (2015) Factors influencing the latency of simple reaction time. Frontiers in Human Neuroscience 9:131 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Woods DL, Wyma JM, Yund EW, Herron TJ, Reed B (2015) Age-related slowing of response selection and production in a visual choice reaction time task. Frontiers in Human Neuroscience 9:193 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Der G, Deary IJ (2006) Age and sex differences in reaction time in adulthood. Psychology and Aging 21(1):62–73 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  • Donders FC (1969) On the speed of mental processes. Acta Psychologica 30:412–431(1868/1869年論文の英訳) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  • Wifall T, Hazeltine E, Mordkoff JT (2016) The roles of stimulus and response uncertainty in forced-choice performance: an amendment to Hick/Hyman Law. Psychological Research 80(4):555–565 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

聴覚と視覚の反応

  • Jain A, Bansal R, Kumar A, Singh KD (2015) A comparative study of visual and auditory reaction times on the basis of gender and physical activity levels of medical first year students. International Journal of Applied and Basic Medical Research 5(2):124–127 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Pain MTG, Hibbs A (2007) Sprint starts and the minimum auditory reaction time. Journal of Sports Sciences 25(1):79–86 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

抑制(押さない課題)

  • Verbruggen F ほか (2019) A consensus guide to capturing the ability to inhibit actions and impulsive behaviors in the stop-signal task. eLife 8:e46323 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Verbruggen F, Logan GD (2008) Automatic and controlled response inhibition: associative learning in the go/no-go and stop-signal paradigms. Journal of Experimental Psychology: General 137(4):649–672 pmc.ncbi.nlm.nih.gov

後方マスキング

  • Breitmeyer BG, Öğmen H (2007) Visual masking. Scholarpedia 2(7):3330 scholarpedia.org
  • Enns JT, Di Lollo V (2000) What's new in visual masking? Trends in Cognitive Sciences 4(9):345–352 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

動体視力

  • Wu TY, Wang YX, Li XM (2021) Applications of dynamic visual acuity test in clinical ophthalmology. International Journal of Ophthalmology 14(11):1771–1778 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Sawaki K, Kohmura Y, Aoki K, Nakamura M, Murakami S, Suzuki Y (2022) Sports and Kinetic Visual Acuity. Juntendo Medical Journal 68(4):387–392 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Uchida Y, Kudoh D, Higuchi T, Honda M, Kanosue K (2013) Dynamic visual acuity in baseball players is due to superior tracking abilities. Medicine & Science in Sports & Exercise 45(2):319–325 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov