用水路や池でウシガエルを見かけることがあります。大きなオタマジャクシを見つけて連れて帰りたくなる場面もあります。ウシガエルは特定外来生物なので何かの規制はかかっているはずですが、その線がどこに引かれているのかは、条文を開くまで分かりませんでした。捕まえるところではありませんでした。
先に結論です。
- 捕まえること自体は規制されません。その場ですぐ放すことも規制されません
- 生きたまま持ち帰ると違反になります。法律の言う「運搬」にあたり、飼養等の禁止(第四条)に触れます
- 罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。両方を科すこともでき、法人には5,000万円以下という別枠があります
- オタマジャクシと卵も同じ扱いです。環境省のリーフレットが明記しています
- その場で締めて速やかに死に至る状態にしたうえで持ち帰ることは、規制の対象になりません
- 学校が教育目的で飼うには環境大臣の許可と、逃げ出さない施設が必要です
- 飼うだけなら条件付きでよいとされたのはアメリカザリガニとアカミミガメの2種だけで、ウシガエルはその対象になっていません
以下、それぞれの根拠を一次資料でたどります。
この記事は法令と公的資料の内容を整理したものです。個別の事案が規制に当たるかどうかの判断は行政の権限に属します。条文は2026年8月14日時点で確認した現行版から引用しています。
1. 線は捕獲ではなく運搬にある
外来生物法が禁じているのは「飼養等」です。その中身は第一条に書かれています。
この法律は、特定外来生物の飼養、栽培、保管又は運搬(以下「飼養等」という。)、輸入その他の取扱いを規制するとともに、国等による特定外来生物の防除等の措置を講ずることにより、特定外来生物による生態系等に係る被害を防止し、(以下略)
外来生物法 第一条(抜粋)4つ並んでいるうち、野外で捕まえた場面にかかってくるのが保管と運搬です。第四条は、この飼養等を原則として禁じています。捕獲という語はここに出てきません。
環境省はその結果をそのまま書いています。
特定外来生物を野外において捕まえた場合、持って帰ることは禁止されていますが(運搬することに該当)、その場ですぐに放すことは規制の対象とはなりません(釣りでいう「キャッチアンドリリース」も規制対象とはなりません)。
環境省「何が禁止されているの?」見つけたときの行動についてもQ&Aがあります。
見つけた特定外来生物を生きたまま許可無く運搬することはできないことから、不用意に捕まえず、まずはその場所の管理者や行政機関に相談することをお勧めします。ただし、特定外来生物を捕まえてしまった場合でも、その場ですぐ放すのであれば問題ありません。
環境省「外来生物法に関するQ&A」Q8罰則は第三十三条にあります。販売や頒布の目的でない第四条違反は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、併科もできます。法人には第三十六条の両罰規定があり、5,000万円以下の罰金が別に定められています。
2. オタマジャクシと卵も同じ
成体だけの話ではありません。環境省中国四国地方環境事務所のリーフレットが書き添えています。
ウシガエルを飼育したり、生きたまま運んだり、別の場所に放したりすることは、外来生物法で禁止されていますので、注意しましょう。※オタマジャクシ、卵も含みます。
環境省 中国四国地方環境事務所「特定外来生物ウシガエル(中国・四国版)」石川県も同じ点を、以前の習慣に触れながら案内しています。
ウシガエルのオタマジャクシは巨大に成長し、以前はよく飼育されていました。しかし「特定外来生物」に指定された現在、ウシガエルのオタマジャクシを許可なく飼育したり、運んだりすることはできません。
石川県「ウシガエル」大きさは見分けの手がかりになります。同じリーフレットが幼生を並べています。
| 種 | 幼生の大きさ | 成体の大きさ |
|---|---|---|
| ウシガエル | 12〜15cm | 12〜18cm |
| トノサマガエル | 7cm | 5〜9cm |
| ニホンアマガエル | 5cm | 3〜4cm |
成体の特徴として同リーフレットが挙げているのは、背側線がないことと大きな鼓膜です。鼓膜はオスで目より大きく、メスで目と同じくらいとされています。トノサマガエルには背側線があります。オタマジャクシで越冬し、孵化した翌年に変態することが多いとも書かれています。
環境省の「特定外来生物同定マニュアル[両生類]」には、ウシガエルの形態や幼生の識別についての項目は置かれていません。また、在来のカエルのオタマジャクシと取り違えやすい、と明示した公的な記述は見つけられませんでした。上の資料はいずれも「大きさが違う」という側から書かれています。
3. その場で締めるとどうなるか
環境省のQ&Aは、釣りの文脈で線をもうひとつ示しています。
特定外来生物に指定されていても、釣りをすることはできます。禁止されることは、例えば釣った魚を持って帰って飼うこと、移動させて放流することです。したがって、釣った特定外来生物をその場で放す「キャッチ・アンド・リリース」は問題ありません。また、釣った特定外来生物をその場で締めた上で、持ち帰って食べることも問題ありません。
環境省「外来生物法に関するQ&A」Q9これがなぜ成り立つのかは、逐条解説の「保管」の定義に書かれています。「保管」とは生物を自己の勢力範囲内に保持してその死傷を防ぐことであり、殺処分を伴う目的で、事前に致死させるために必要な措置が十分講じられ、速やかに死に至る状態で保持することは原則として保管に該当しない、という整理です。運搬についても同じ考え方が置かれています。
その例示に、カエルが名指しで出てきます。
例えば、水の入っていないクーラーボックスにオオクチバスを入れる、フィルムケース等の気密性が高く速やかに窒息死することが確実な容器にカエルを入れる、(略)等が「保管」に該当しない例として想定される。反対に、わなにかかった動物を意図的に放置する等、殺処分を伴う目的であっても、事前に致死させるために必要な措置が講じられていない場合等には、保管に該当し得る。
環境省「外来生物法 逐条解説」(令和8年7月1日)後半が要点だと読めます。目的が殺処分であれば何でもよいわけではなく、確実に速やかに死ぬ状態が用意されているかどうかで分かれています。バケツに入れて車に積む形はここに入りません。
なお法第二条第一項により、特定外来生物は生きているものに限られます。冷凍や加工の状態になったあとは、外来生物法の規制の外です。
4. どこまでなら運べるのか
「運搬」の範囲も逐条解説に定義があります。
「運搬」とは、生物を事実上の支配下において運び異なる場所に移すことをいう。この「異なる場所」とは、同一性・一体性のない場所のことをいい、同一性・一体性のある場所内であれば、特定外来生物を運び移しても本法の「運搬」には該当しない。
環境省「外来生物法 逐条解説」どこからが別の場所なのかは、Q&Aがオオクチバスを例に具体化しています。釣った河川・湖沼の岸に隣接する道路に至らない範囲での運び移しは問題ないとされ、一方で岸に隣接する周回道路を経て検量所へ生きたまま運ぶことは違反にあたるとされています。湖沼や河川の切り分けについても書かれています。
湖沼・河川については、たとえ水系でつながっているものでも、国土地理院発行の地図で名称が付されている湖沼・河川ごとに「別の湖沼・河川」とみなします。また、堰などで魚の動きが制限されている河川については、その堰などをまたがって「同一性・一体性のある河川」とはみなしません。
環境省「外来生物法に関するQ&A」Q9この表はオオクチバスを例に書かれたものですが、Q9の冒頭は特定外来生物一般について述べています。ウシガエルだけを対象にした運搬範囲の表は見つけられませんでした。
5. 学校が飼うには許可がいる
飼養等の許可は第五条にあり、目的は施行規則第三条に限定されています。第二号が「教育」です。学校は許可を取れる立場にありますが、取らずに飼うことはできません。
この「教育」がどこまでを指すかも、逐条解説が書いています。
原則として学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく学校等の公益性の高い教育機関が行う教育活動を対象としており、NPO等による普及啓発については原則として認めていない。また、私塾についても認めていない。保育所、認定こども園等については(略)教育目的であることが認められる場合には(略)許可の対象となる。
環境省「外来生物法 逐条解説」施行規則第三条第二号許可には、逃げ出さない施設(特定飼養等施設)が要ります。第五条第三項が、施設を有しないことを不許可の事由として挙げています。
解剖の教材としての利用については、指定前の実態を環境省が調べた資料があります。
ウシガエルは、生物学実習での解剖用として大学等で使われている。(略)全国でウシガエルを実験等に使用している大学は少なくとも100機関、その他の施設(専門学校、医療関係の研究機関など)が50機関以上あると考えられる。これ以外にも小中学校の理科クラブなどの解剖実験などに利用されているため、全数の把握は困難である。
環境省「ウシガエル(食用ガエル)の流通実態等について」第4回分類群専門家グループ会合 資料1-7これは2005年、指定される前の調査です。現在の状況を示すものではありません。指定後については、中国四国地方環境事務所のリーフレットが「食用や実験動物として現在でも多数利用されています。ただし、生体を使用する場合は事前に環境省の飼養等許可が必要です」と書いています。
アカミミガメとアメリカザリガニについては、文部科学省が2023年5月22日に各教育委員会あて事務連絡を出しています。ウシガエルについて学校向けに扱いを説明した国の通知や資料は、今回の調査では見つけられませんでした。
6. 駆除のために捕るときも手続きがいる
第四条の例外には、許可のほかに「防除に係る捕獲等」があります。ただしここでの防除は、法第三章の手続きを経たものを指します。市町村なら主務大臣の確認、国と地方公共団体以外の団体なら認定です。
手続きなしで運搬までできる小規模防除の特例もありますが、対象は限られています。
地域のボランティアによる防除など小規模な防除については、以下の場合であれば、法に基づく防除の公示、確認又は認定といった手続きをとらなくても外来生物法の飼養等(飼養、栽培、保管、運搬)の禁止の適用除外となります。
一 植物(略)
二 かみきりむし科(略)
ウシガエルはこの2つに入っていません。地域の団体が生きたまま運んで処分する形をとるなら、確認または認定の手続きが要ることになります。
実際に公示されている例もあります。北海道七飯町がウシガエルの防除で確認を受けており、期間は令和6年9月5日から令和16年3月31日までとされています。近畿6府県を区域とする一般社団法人淡水生態研究所の認定にも、カミツキガメ・ハナガメと並んでウシガエルが入っています。
防除実施要領は、捕獲した個体の扱いについても書いています。その場で処分しない場合は「従事者や第三者による個人的な持ち帰り及び野外への放置をせず」適切に処分することとされています。駆除の側でも、持ち帰りは切り分けられています。
7. なぜ日本にいるのか
ウシガエルの侵入年代は1918年とされています。国立環境研究所の侵入生物データベースは、侵入経路を「食用,養殖用としてアメリカ合衆国南部,ニューオリンズから持ち込まれた」と記載しています。環境省の資料も「1918年に日本に初めて持ち込まれ、一時は食用目的で各地で養殖された」と書いています。
特定外来生物としての指定は2006年(平成18年)2月1日です。カダヤシなど43種類と同じ日に施行されました。アメリカザリガニ以外の外来ザリガニが2020年、アメリカザリガニとアカミミガメが2023年ですから、ウシガエルはかなり早い時期からの指定になります。
影響として公的資料が挙げているのは、捕食と競合です。
希少な在来種の捕食や、水辺に生息するトノサマガエルやダルマガエルなど在来のカエル類と餌資源をめぐる競争など、生態系への影響が懸念されています。ウシガエルが侵入・定着したために、かつては生息していたモリアオガエルが見られなくなった池や、ウシガエルの増加とともに、在来のカエルがほとんどみられなくなった島もあります。
環境省 中国四国地方環境事務所「特定外来生物ウシガエル」侵入生物データベースは食性を「肉食性。口に入る大きさであればほとんどの動物を食べる」とし、世界の侵略的外来種ワースト100と日本の侵略的外来種ワースト100の両方に挙げられていることを記しています。
持ち帰りが起きることは、制度の側も見ていました。2023年にアメリカザリガニとアカミミガメが条件付きになった理由として、逐条解説はこう書いています。「子どもを含む市民が規制の内容を知らずに捕まえて家まで運搬し、飼養すると法第4条(飼養等の禁止)に違反することとなってしまうことに加え、許可手続の手間や違反時の罰則へのおそれから、許可を得ない飼養等や放出等が誘発され、かえって生態系等への被害が拡大するおそれがあった」。この緩和が適用されたのは2種だけで、ウシガエルは対象になっていません。
おわりに
ウシガエルは、見つけても捕まえても違反にはなりません。バケツに入れて歩き出したところから規制がかかります。線がそこにあることは、条文を開かないと分かりにくいと思われます。「特定外来生物だから触ってはいけない」でも「見つけたら駆除しよう」でもない位置に、実際の線は引かれていました。
アメリカザリガニについては、同じ制度のもう一方の側を別の記事にまとめました。あちらは飼うことが認められていて、そのかわり条件が付く側です。
ここに書いたのは一つの考え方です。条文や告示は改正されますし、自治体の条例が別に定めている場合もあります。お気づきの点がありましたら、お問い合わせフォームからお寄せいただけるとうれしいです。
出典
- 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)第一条・第二条・第四条・第五条・第九条・第十七条の四・第十八条・第三十二条・第三十三条・第三十六条 e-Gov法令検索
- 同法施行令(平成17年政令第169号)別表第一・附則 e-Gov法令検索
- 同法施行規則(平成17年農林水産省・環境省令第2号)第二条・第三条 e-Gov法令検索
- 環境省「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 逐条解説」(令和8年7月1日) PDF/掲載ページ
- 環境省「何が禁止されているの?」 日本の外来種対策/「罰則について」 同
- 環境省「外来生物法に関するQ&A」Q8・Q9 日本の外来種対策
- 環境省・農林水産省「釣りをする際の注意点」(令和2年11月2日改訂) PDF
- 環境省 中国四国地方環境事務所「特定外来生物ウシガエル(中国・四国版)」(2014年6月更新) PDF/両生類資料集
- 環境省「特定外来生物同定マニュアル[両生類]」 PDF/掲載ページ
- 環境省「特定外来生物一覧(指定日別)」 PDF/特定外来生物等一覧
- 環境省「特定外来生物防除実施要領」(令和5年3月17日/令和8年7月1日一部改正) PDF/「新法に基づく防除の公示一覧」 ページ
- 環境省「ウシガエル(食用ガエル)の流通実態等について」第4回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(爬虫類・両生類)資料1-7 PDF/議事概要
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「ウシガエル」 ページ
- 石川県「ウシガエル」(更新日 2017年7月18日) ページ
- 北海道ブルーリスト「主な外来種の見分け方(両生類)」 ページ