通学の時間帯に自転車が横に並んで走っているのを見かけることがあります。車道でも歩道でも起きます。後ろから来た車は抜けず、歩道なら歩行者が端に寄ることになります。これがルールの上でどうなっているのかを調べました。

先に結論です。

  • 横に並んで走ることは「並進」と呼ばれ、道路交通法第19条で禁止されています
  • 禁止されているのは「軽車両」の並進です。自転車に限りません。車道か歩道かという場所の限定も条文にはありません
  • 例外は「並進可」の標識がある道路だけです。しかも普通自転車に限られ、3台以上は認められません(第63条の5)
  • その標識はほとんど見かけません。兵庫県警は「県内に『並進可』の規制実施箇所はありません」と明記しています
  • 罰則は2万円以下の罰金又は科料。2026年4月からは青切符の対象で、反則金3,000円です
  • ただし青切符の対象は16歳以上。中学生と高校1年生の一部は対象外で、原則として指導警告になります
  • 自転車乗用中の死傷者数は15〜19歳が全年齢層で最多(令和6年・11,997人・18.3%)。19歳以下で全体の約3割を占めます

以下、それぞれの根拠を一次資料でたどります。

この記事は法令と公的資料の内容を整理したものです。個別の事案が違反にあたるかどうかの判断は警察の権限に属します。条文は2026年8月11日時点の現行施行版から引用しています。

1. 「並走」ではなく「並進」

日常の言葉では「並走」と言うことが多いと思います。ところが道路交通法が使うのは「並進」です。読み方は「へいしん」。条文の見出しも「軽車両の並進の禁止」となっています。

この言い換えは法令用語と日常語がずれる典型的な例です。

以下では条文にそろえて「並進」と書きます。横に並んで走ることだと読み替えてください。

2. 禁止は第19条、例外が第63条の5

まず禁止のほうです。

(軽車両の並進の禁止)
第十九条 軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。 道路交通法(昭和35年法律第105号)第19条

短い条文ですが、読むところが2つあります。

ひとつは主語が「軽車両」であることです。自転車と書いていません。軽車両にはリヤカーや荷車も含まれます。自転車だけのルールではありません。

もうひとつは場所が限定されていないことです。車道でも歩道でも路側帯でも、条文は書き分けていません。この点は4章でもう一度触れます。

そして例外です。こちらが第63条の5になります。

(普通自転車の並進)
第六十三条の五 普通自転車は、道路標識等により並進することができることとされている道路においては、第十九条の規定にかかわらず、他の普通自転車と並進することができる。ただし、普通自転車が三台以上並進することとなる場合においては、この限りでない。 道路交通法 第63条の5

禁止が第19条、例外が第63条の5。この2つを逆にしている解説をときどき見かけます。条番号を書くときは確かめたほうが安全です。

例外の条文にも読むところがあります。対象が「普通自転車」に限られている点です。普通自転車とは、車体の大きさと構造が内閣府令の基準に適合し、他の車両を牽引していない自転車のことで、警察庁の資料では長さ190cm・幅60cmを超えないことなどが目安として示されています。タンデム自転車(2人以上が前後に並んで乗る自転車)やベロタクシー(客席を備えた自転車タクシー)はここに入りません。標識があっても並進できない自転車があるということになります。

そして「三台以上並進することとなる場合」はただし書で外れます。標識があっても2台までです。

3. 「並進可」の標識はほとんど見かけない

その標識は実在します。「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の別表第二です。

種類:並進可 番号:(401)
表示する意味:交通法第六十三条の五の道路標識により、普通自転車が他の普通自転車と並進(三台以上並進することとなる場合を除く。以下この項において同じ。)することができることとすること。 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府・建設省令第3号)別表第二

種別は指示標識で、番号は401。青地に白の図柄です。禁止する標識ではなく、「ここでは並んでよい」と示すための標識になります。

問題はこの標識が置かれている道路がほとんど無いことです。兵庫県警のページには はっきり書かれています。

兵庫県内に「並進可」の規制実施箇所はありません 兵庫県警察「自転車の交通ルール」

全国に何箇所あるのかを示す公的な資料は見つけられませんでした。確認できたのは兵庫県の1件だけです。ただ、少なくとも「近所の道にたぶんある」という前提で考えないほうがよさそうです。標識を見た記憶がないのであれば、その道では並進できないと考えるのが実際に近いと思われます。

4. 車道と歩道で何が起きているか

並進(横に並ぶ) 一列(縦に並ぶ) ↑ 進行方向 ↑ 進行方向 路端 中央線 対向車線 自転車 自転車 路端 中央線 対向車線 自転車 自転車 中央線を越えないと追い越せない 同じ車線の中で追い越せる
図1車道を上から見た模式図。日本は左側通行なので、自転車も車も左の車線を走ります。並進していると後続車は中央線を越えることになります(車線の幅は道路によって違います)

警察庁は、並進がなぜいけないのかを次のように説明しています。

並進は、自動車や歩行者を巻き込んだ事故に発展するおそれがあるほか、自動車や歩行者が通行するスペースが狭くなり、他の自動車や歩行者の通行に支障を及ぼすおそれがあります。 警察庁交通局『自転車ルールブック』令和7年9月・p.40

歩道の場合

歩道で並んで走られると通りにくい、という感覚のほうが多くの人にとって身近かもしれません。ただ歩道の話には、その前に確かめることがあります。そもそも自転車が歩道を通れるのは、限られた場合だけだという点です。

第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。(略)
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。 道路交通法 第63条の4第1項

第2号の「政令で定める者」は、道路交通法施行令第26条で児童及び幼児・70歳以上の者・一定の身体障害を有する者と定められています。児童は13歳未満です。中学生と高校生は、この号には当たりません。

そして歩道を通れる場合でも、通り方が決まっています。

前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(略)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。 道路交通法 第63条の4第2項

中央から車道寄りを徐行し、歩行者の通行を妨げることになるときは一時停止する。横に並んでいる状態で、この条件を満たすのは難しいと思われます。

ただ、歩道上で並進した場合に何の違反になるのかを明示した公的な資料は、見つけられませんでした。第19条には場所の限定がないので歩道でも適用されると読める構造ではありますが、警察庁がそう書いた文書は確認できていません。確かなのは、歩道を通れる条件と、通れる場合の通り方が別に定められていることのほうです。なお歩道徐行等義務違反(第63条の4第2項)も、青切符では並進と同じ3,000円です。

5. 罰則2万円と反則金3,000円は別のもの

金額が2つ出てくるので、整理しておきます。

罰則は第121条第1項第8号により2万円以下の罰金又は科料です。これは刑事罰にあたります。

反則金は2026年4月1日から始まった交通反則通告制度によるもので、3,000円です。警察庁の資料では「並進禁止違反」という名前で一覧に載っています。反則金を納付すれば公訴は提起されません。

3,000円反則金(並進禁止違反)
2万円以下罰金又は科料
(第121条第1項第8号)
16歳青切符の対象年齢

3,000円は、青切符の一覧の中では低いほうの区分です。同じ3,000円には歩道徐行等義務違反、二人乗り、自転車道通行義務違反などが並びます。信号無視は6,000円、携帯電話使用等(保持)は12,000円です。

6. 16歳未満は対象外。ただし違反でなくなるわけではない

ここが中学生の保護者にとっていちばん関係するところだと思われます。

青切符の対象は16歳以上です。根拠は道路交通法第125条第2項で、「反則者」の定義から16歳未満の者が除かれています。警察庁の資料にも、指導警告で処理する例として「16歳未満の者による違反」が挙げられています。警視庁は「16歳未満の者には原則として指導警告を行います」と書いています。

気をつけたいのは、これが「中学生は並進してよい」という意味ではないことです。第19条違反であること自体は変わりません。変わるのはその後の手続きのほうです。反則金を納める手続きに乗らず、指導警告になる。

そして15〜19歳という年代を考えると高校1年生の途中で扱いが変わることになります。同じ登校の列で隣を走っている同級生と自分とで手続きが違うという状態が起こりえます。

7. 自転車で最も多く死傷しているのは15〜19歳

以下、警察庁の統計から自転車乗用中の死傷者数を年齢層別に並べたものです。

年齢層死傷者数構成率
4歳以下361人0.6%
5〜9歳1,868人2.9%
10〜14歳5,111人7.8%
15〜19歳11,997人18.3%
20〜24歳4,781人7.3%
25〜29歳3,860人5.9%
65歳以上12,672人19.4%
合計65,481人100.0%

※ 令和6年。警察庁「道路の交通に関する統計」より。中間の年齢層は省略しています。

5歳刻みで見て15〜19歳が最も多くなっています。65歳以上は5歳刻みではなく上を全部まとめた区分なので、単一の年代としては15〜19歳が最多ということになります。10〜14歳と合わせると19歳以下で19,337人。全体の約3割です。

ヘルメットについても、警察庁が学齢別の傾向を書いています。

ヘルメットの着用率は全体的に上昇傾向にあり、中学生、小学生は高いが、高校生、65歳以上は低くなっている。 警察庁交通局『令和7年における交通事故の発生状況について』令和8年2月26日

中学校で身についたものが、高校で外れていく形になっています。並進も同じ形をしているのではないか、というのはこの記事の範囲では確かめられません。ただ、同じ年代で2つの数字が同じ向きに出ていることは、記録しておく価値があると思われます。

8. 国は並進を「ジグザグ運転・競争」と同じ列に置いている

交通安全教育の内容は、国家公安委員会告示で定められています。その中学生向けの項に、並進が出てきます。

(a) 天候、時間帯、交通の状況等に応じた安全な速度で走行しなければならないこと。
(b) 交差点、踏切の手前等で車両等の前に割り込んだり、これらの間を縫って前に出たりしてはならないこと。
(c) 並進、ジグザグ運転、競争等をしてはならないこと。
(d) 路側帯を通行する場合は歩行者の通行を妨げてはならないこと。 交通安全教育指針(平成10年国家公安委員会告示第15号)第3節「中学生に対する交通安全教育」

並進が、ジグザグ運転や競争と同じ列に置かれています。この3つは、どれも「ふざけている」ように見える行為ではなく、周りの車や歩行者から見て動きが読めなくなる行為だという点で共通しています。

同じ指針は中学生と高校生それぞれについて、自転車乗用中の事故が多いことを踏まえた教育を求めています。中学生の項には保護者が関わることの重要性も書かれています。

学校向けには文部科学省が2025年10月21日に警察庁の『自転車ルールブック』を各都道府県・指定都市教育委員会などへ周知する事務連絡を出しています。青切符の導入は学校現場にも届けられている情報だということになります。

おわりに

並進は条文の上では短い一文で禁じられています。例外の標識はあるものの、ほとんど設置されていません。青切符が始まって金額が付きましたが、いちばん人数の多い年代の一部はその手続きの対象から外れています。

並進によって後ろの車が対向車線にふくらむことになります。図1がその話です。

ここに書いたのは一つの考え方です。条文は改正されますし、地域によって運用の違いもあります。お気づきの点がありましたら、お問い合わせフォームからお寄せいただけるとうれしいです。

出典

  • 道路交通法(昭和35年法律第105号)第19条・第63条の4・第63条の5・第121条・第125条 e-Gov法令検索
  • 道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第26条・別表第六 e-Gov法令検索
  • 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府・建設省令第3号)別表第二 e-Gov法令検索
  • 警察庁交通局『自転車を安全・安心に利用するために ─自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入─【自転車ルールブック】』令和7年9月 PDF自転車ポータルサイト
  • 警察庁交通局『令和7年における交通事故の発生状況について』令和8年2月26日 PDF
  • 警察庁「道路の交通に関する統計」自転車乗用中の年齢層別死傷者数(令和6年) e-Stat
  • 交通安全教育指針(平成10年国家公安委員会告示第15号) 警察庁 参考資料集 PDF
  • 兵庫県警察「自転車の交通ルール」 並進の禁止
  • 警視庁「自転車の交通反則通告制度(青切符)の導入」 解説ページ
  • 文部科学省「『自転車ルールブック』の周知について」令和7年10月21日事務連絡 掲載ページ