本は読んだ。原稿用紙も机の上にある。それでも一行目が書けない。このとき止まっているのは書く力ではなく、何を守ればいいのかがはっきりしていないほうかもしれません。第72回青少年読書感想文全国コンクールの応募要項とQ&Aを開いてみたら、決まっていないことのほうが多くありました。
先に結論です。
- 原稿用紙の大きさと字詰めに規定はありません。20字×20行でなくてもかまいません
- 題名と氏名をどこに書くかも決まっていません。「欄外でも、枠内どちらでもかまいません」
- 段落の書き出しについての記載は、要項にもQ&Aにもありません
- 字数は句読点も改行の空白も1字に数えます。題名・学校名・氏名は数えません
- 本文は低学年800字以内、中学年と高学年1,200字以内、中学校と高等学校2,000字以内です
- 提出は縦書きで自筆が原則です。ただしケガや障がい等で自筆が難しい場合は、具体的な理由を明記すれば代筆やワープロソフトでの応募も受け付けるとされています
- 点訳・音訳を利用して読んだ場合も、理由と原本の情報を添えて応募できます
- 電子書籍で読んだ作品は応募できません。「紙媒体での書籍に限ります」とされています
- AIに書かせたものは「個人のオリジナル」に当たりません
- ただし都道府県が別に規定を設けている場合があります。指定原稿用紙の有無・使い方・提出方法は在籍校に確認することになります
以下、それぞれを要項とQ&Aでたどります。
この記事は第72回青少年読書感想文全国コンクール(共催:全国学校図書館協議会・毎日新聞社)の応募要項とQ&Aを2026年8月14日に確認して整理したものです。学校の宿題としての読書感想文をどう扱うかは学校ごとに異なります。判断に迷う場合は在籍校にご確認ください。
1. 決まっていないこと
要項を開いて意外だったのが、書式の指定がほとんどないことでした。
原稿用紙の大きさと字詰め
原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰めに規定はありません。
第72回青少年読書感想文全国コンクール 応募要項Q&Aにも同じ趣旨の項目があります。「原稿用紙は専門のものを使用しないとダメ?」という質問への答えは「全国コンクールに関しては、原稿用紙の指定はありません。」でした。
題名と氏名の位置
文字数の規定はしておりますが題名・氏名の書く位置は特に定めておりませんので欄外でも、枠内どちらでもかまいません。
同 Q&A「感想文の題名や氏名は用紙のどこに書くの?」段落の書き出し
要項の応募規定と作品についての項目を通して読んでも、Q&Aの全24項目を見ても、段落や書き出しについての記載は見当たりませんでした。1マス空けるかどうかは、全国のコンクールが決めていることではないようです。
「決まっていない」と「守らなくていい」は別です。要項の末尾には、都道府県が別に規定を設けている場合があると書かれています(7章)。学校で配られた用紙や指示があるなら、そちらが優先します。ここで整理しているのは、全国が決めていることの範囲です。
2. 決まっていること ── 字数と数え方
字数のほうは明確です。
| 部門 | 本文の字数 | 400字詰めなら(目安) |
|---|---|---|
| 小学校低学年の部(1・2年) | 800字以内 | 2枚 |
| 小学校中学年の部(3・4年) | 1,200字以内 | 3枚 |
| 小学校高学年の部(5・6年) | 1,200字以内 | 3枚 |
| 中学校の部 | 2,000字以内 | 5枚 |
| 高等学校の部 | 2,000字以内 | 5枚 |
数え方も要項に書かれています。
句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。題名、学校名、氏名は字数に数えません。
第72回青少年読書感想文全国コンクール 応募要項段落を変えたときの余白も字数に入ります。文字だけ数えて進めると、最後に見込みと合わなくなることがあります。使う用紙が決まっているなら、字数より枚数で見るほうが確実です。表の枚数は400字詰めを使った場合の目安で、要項が定めているものではありません。
なお「規定の字数以内なら何字でもいいの?」というQ&Aの答えは「規定の字数をなるべくいっぱいに使って、思いっきり読書の感動を表現してみましょう。」でした。下限は示されていません。
3. 自筆で書けないときの道は用意されている
この記事でいちばん伝えたい部分です。要項は自筆を原則としながら、続けてこう書いています。
作品は自筆のものを提出してください(コピー不可。デジタル機器使用不可。ただし、自筆が不可能でデジタル機器を使用する、または代筆となるなどの場合は理由を添えてご応募ください)。
第72回青少年読書感想文全国コンクール 応募要項Q&Aには、より具体的な言い方があります。
ケガや障がい等、自筆での応募が難しい場合は、具体的な理由を明記していただければ代筆またはワープロソフト等による応募も受け付けます。
同 Q&A「コピーやワープロでの提出が認められるのは?」読むほうにも同じ形の条項があります。
点訳・音訳を利用した読書の場合は、その理由および原本、音訳・点訳したものの情報を添えてご応募ください。
第72回青少年読書感想文全国コンクール 応募要項特別支援学校については「特別支援学校はそれぞれの対応する部に」応募すると書かれています。専用の部門を作るのではなく、学年に対応する部に入る形です。
ここで確かめておきたいのは、手が動かないことと、書けないことは別に扱われているという点です。代筆やワープロソフトが認められているということは、審査が見ているのは字を書く動作ではないということになります。
4. 電子書籍で読んだ作品は応募できない
読むほうにはもうひとつ条項があります。
紙媒体での書籍に限りますのでご応募いただけません。
同 Q&A「電子書籍を読んで感想文を書いてもいいの?」3章と並べると、読む手段について線が引かれていることが見えてきます。点訳・音訳は理由を添えれば応募でき、電子書籍は応募できない。理由は要項にもQ&Aにも書かれていません。
電子書籍は、文字を大きくしたり読み上げさせたりできる形でもあります。ただしここで整理しているのはコンクールの応募条件です。本を電子書籍で読むこと自体を止めるものではありません。応募まで考えるなら、対象の本を紙で用意する必要がある、ということになります。
5. 学年ごとに求められること
学習指導要領の国語には「B 書くこと」という領域があり、学年の段階ごとに指導事項が置かれています。読書感想文もこの範囲の中にある活動です。原文を並べると、求められることが学年で変わっていくのが見えます。
| 学年 | 構成について | 書き表し方について |
|---|---|---|
| 1・2年 | ……事柄の順序に沿って簡単な構成を考えること | 語と語や文と文との続き方に注意しながら、内容のまとまりが分かるように書き表し方を工夫すること |
| 3・4年 | 書く内容の中心を明確にし、内容のまとまりで段落をつくったり、段落相互の関係に注意したりして、文章の構成を考えること | 自分の考えとそれを支える理由や事例との関係を明確にして、書き表し方を工夫すること |
| 5・6年 | 筋道の通った文章となるように、文章全体の構成や展開を考えること | ……事実と感想、意見とを区別して書いたりするなど、自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫すること |
小学校学習指導要領(平成29年告示)国語「B 書くこと」の指導事項から、構成に関する項目と書き表し方に関する項目を抜き出しています。「……」は前半の省略を示します。告示の原文は読点に「,」を用いていますが、読みやすさのため「、」に置き換えています。
低学年は順序、中学年は考えと理由・事例の関係、高学年は事実と感想・意見の区別。指導事項の側では、この順で積み上がる形になっています。
なお学習指導要領の国語の章に「読書感想文」「感想文」という語はありません。読書感想文という活動名で書かれているわけではなく、「書くこと」の指導事項の中に位置づく形になります。
6. AIに書かせたものは応募できない
要項の応募作品の条件はこうなっています。
日本語で書かれた作品に限ります。/課題読書、自由読書それぞれに一人1編ずつ応募できます。/個人のオリジナルで未発表の作品に限ります。/他の類似コンクールとの二重応募は認めません。/盗作や不適切な引用等があった場合、審査対象外になることがあります。
第72回青少年読書感想文全国コンクール 応募要項AIに書かせたものは「個人のオリジナル」に当たりません。あわせて、要項とQ&Aを通して読んでも「AI」「生成AI」「対話型AI」という語は出てきませんでした。名指しの条項があるのではなく、もともとある条件で読む形になります。
ここで定められているのはコンクールへの応募作品についてです。学校の宿題としての読書感想文をどう扱うかは学校ごとに異なります。
7. 全国が決めていることと、地区が決めていること
ここまで見てきたのは全国の要項です。要項自身がそれだけではないことを書いています。
都道府県によっては、本応募要項の他に規定を設けている場合があります(指定原稿用紙の有無、原稿用紙の使い方、提出方法など)。詳細は在籍校にご確認ください。
第72回青少年読書感想文全国コンクール 応募要項締め切りも「都道府県により異なります」とされています。1章で見た「決まっていない」3つは、いずれもこの注記の対象に入りうる項目です。指定原稿用紙の有無、原稿用紙の使い方が名指しで挙がっています。
学校で配られた用紙や書き方の指示があるなら、それが地区の規定か学校の指導にあたります。全国の要項と食い違って見えるときは、在籍校の指示が優先すると考えるのが素直です。この記事の使いどころは、指示がないところで迷ったときの拠りどころのほうだと思います。
おわりに
要項を読んで残ったのは決まっていることの少なさでした。原稿用紙の形も、題名を書く位置も、段落の作り方も、全国のコンクールは指定していません。決まっているのは字数とその数え方と自筆であることくらいです。
そして自筆のところにも書けないときの道が書き添えてありました。ケガや障がいで自筆が難しいなら理由を明記すれば代筆でもワープロソフトでもよい。点訳や音訳で読んだのならその情報を添えて応募できる。この2つは探さないと出てこない場所に置かれています。
ここに書いたのは一つの考え方です。要項は毎年改められますし、都道府県の規定も別にあります。お気づきの点がありましたら、お問い合わせフォームからお寄せいただけるとうれしいです。