はじめに

2026年(令和8年)1月、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)はITパスポート試験のシラバスをVer.6.5に改訂しました。前回のVer.6.4(令和7年4月)からわずか9か月での更新であり、IT分野の変化の速さを反映しています。

「新しいシラバスでは何が変わったのか?」「どの用語を重点的に学べばよいのか?」――受験者なら誰もが気になるこの疑問に答えるため、本記事では2,651語を収録した独自の用語辞書データベースを活用し、シラバスVer.6.3から6.5までの変遷を定量的に分析しました。

分析の結果、シラバスVer.6.5の現行掲載用語999語のうち、新たに追加された用語は450語。本記事ではこの450語すべてをカテゴリ別に一覧化し、各用語の詳細解説ページへのリンクを付けています。

シラバスのバージョン変遷

ITパスポート試験のシラバスは、技術トレンドや社会の変化に合わせて定期的に改訂されています。直近3バージョンの変更点を整理します。

バージョン 改訂時期 主な変更内容
Ver.6.3 令和5年12月 用語例の追加・見直し・整理(ベースライン)
Ver.6.4 令和7年4月 情報リテラシー・法改正関連の用語見直し
Ver.6.5 令和8年1月 AI・セキュリティ・基礎理論を大幅強化

シラバスの用語例レベルでの変化を見ると、Ver.6.3からVer.6.4への変更は比較的小規模で、2語の追加と1語の整理にとどまりました。一方、Ver.6.4からVer.6.5では163語が新たに明示され、172語が統合・整理されるなど、大幅な見直しが行われています。

用語辞書データベースでは、全2,651語のうち999語がVer.6.5の現行シラバスに掲載されている用語です。残りの1,652語は旧バージョンで出題対象だったが現行では外れた用語や、関連知識として収録されている用語です。

Ver.6.5 新用語の全体像

本記事での「新用語」とは、用語辞書データベースで従来のシラバスには掲載されていなかった用語のうち、現行Ver.6.5に収録されている450語を指します。

2,651 総収録用語数
999 v6.5掲載
758 新用語
450 v6.5掲載
新用語

大分類別の内訳(新用語450語)

大分類新用語数構成比
ストラテジ系207語46.0%
マネジメント系39語8.7%
テクノロジ系204語45.3%

中分類別 TOP10

順位中分類新用語数
1企業活動77語
2セキュリティ59語
3ビジネスインダストリ50語
4法務28語
5情報メディア28語
6ネットワーク27語
7経営戦略マネジメント20語
8コンピュータ構成要素18語
9情報デザイン18語
10サービスマネジメント16語

ストラテジ系とテクノロジ系がほぼ同数で、両分野で全体の9割以上を占めます。中分類では企業活動(77語)、セキュリティ(59語)、ビジネスインダストリ(50語)が上位に並び、AI活用やサイバーセキュリティの重要性の高まりを反映した改訂であることがわかります。

カテゴリ別 新用語一覧(450語)

以下は、シラバスVer.6.5に掲載されている新用語450語を大分類・中分類別に一覧表示したものです。各用語名をクリックすると、詳しい解説ページに移動します。

ストラテジ系(207語)

システム企画(3語)

システム化計画・要件定義に関する用語が追加されました。

システム戦略(15語)

情報システム戦略や業務改善に関連する用語が追加されています。

ビジネスインダストリ(50語)

AI倫理、エンジニアリング、電子商取引、IoTに関する用語が追加されました。

企業と法務(1語)

企業活動(77語)

データ分析手法やAI活用、経営管理の基礎知識に関する用語が多数追加されました。

1次データ 2次データ 2軸グラフ CDP GIS GX(グリーントランスフォーメーション) HRテック MVV Off-JT e-ラーニング アカウントアグリゲーション アンケート インボイス制度(適格請求書等保存方式) カンパニー制 カーボンフットプリント ガバメントクラウド クロスセクションデータ クロス集計表 グルーピング コンセプトマップ シェープファイル シグニファイア シミュレーションのデータ同化 タレントマネジメント チャートジャンク デジタル社会形成基本法 データ駆動型社会 パターン発見 パーパス経営 ブレーンライティング プレーンストーミング メンタリング メンタルヘルス モザイク図 モチベーション リスキリング ロジックツリー 与信管理 人の行動ログデータ 人的資本経営 個人識別符号 共起キーワード 内部成長率(Internal Growth Rate:IGR) 分割表 国家戦略特別区域法 変動費率 官民データ活用推進基本法 実験データ 折れ線グラフ 擬似相関 散布図行列 時系列データ 最小二乗法 期待金額価値 株主総会 棒グラフ 構造化データ 機械の稼働ログデータ 相関と因果 社会的責任投資 第1種の誤り 第2種の誤り 箱ひげ図 精度と偏り 系統図 経営理念 経営目標 統計的バイアス 複合グラフ 親和図法 認知バイアス 調査データ 財務・資産・人事・情報管理 質的データ 量的データ 階層型組織 非構造化データ

技術戦略マネジメント(8語)

技術戦略の立案・管理に関する用語が追加されています。

新しい技術(1語)

法務(28語)

法改正に伴う用語の追加・更新が行われています。下請法の名称変更やGX推進法の追加など。

経営戦略(4語)

経営戦略マネジメント(20語)

マーケティングや経営分析、ビジネス戦略に関する用語が追加されました。

マネジメント系(39語)

サービスマネジメント(16語)

ITILやサービス管理の基礎用語が追加されました。

システム監査(4語)

監査や内部統制に関する用語が追加されています。

システム開発技術(11語)

テスト手法や開発工程、品質管理に関する用語が充実しています。

ソフトウェア開発管理技術(4語)

開発プロセスやアジャイル開発に関する用語が追加されました。

プロジェクトマネジメント(2語)

PMBOKベースのプロジェクト管理知識が強化されています。

開発技術(2語)

テクノロジ系(204語)

アルゴリズムとプログラミング(13語)

プログラミング基礎やデータ構造に関する用語が追加されています。

コンピュータシステム(1語)

コンピュータ構成要素(18語)

プロセッサやメモリなどハードウェアの基礎用語が追加されました。

システム構成要素(6語)

システムの構成やバックアップに関する用語が追加されています。

セキュリティ(59語)

サイバー攻撃手法やセキュリティ技術、暗号化の用語が多数追加されました。

ATT&CKフレームワーク DLP ISMAP IoTセキュリティガイドライン MITB (Man-in-the-browser)攻撃 SIEM アクセス権 アクセス管理 インターロック クライアント証明書 クリックジャッキング クリプトジャッキング クロスサイトスクリプティング対策 クロスサイトリクエストフォージェリ コンピュータ不正アクセス届出制度 コールバック サイバーレスキュー隊 スプーフィング セキュリティケーブル ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出制度 ディスク暗号化 ディレクトリトラバーサル デジタル署名 トラストアンカー ドライブバイダウンロード パスワードリスト攻撃 パスワードレス認証 ビジネスメール詐欺 ファイルレスマルウェア ファイル交換ソフトウェア ファイル暗号化 プライバシーポリシー プロンプトインジェクション リスクコミュニケーション リスクベース認証 ルート証明書 不正のトライアングル 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 中間者(Man-in-the-middle)攻撃 二重脅迫 他人受入率 入退室管理 声紋認証 安全管理措置 情報セキュリティ委員会 情報セキュリティ管理基準 攻撃の準備 敵対的サンプル 施錠管理 本人拒否率 監視カメラ 目的の実行(Actions on Objectives) 端末挙動監視・対応 第三者中継 網膜認証 虹彩認証 電子透かし 静脈パターン認証 顔認証

ソフトウェア(3語)

OSやミドルウェア、ファイル管理に関する用語が追加されました。

データベース(3語)

RDBやSQL、データ操作に関する用語が追加されました。

ネットワーク(27語)

TCP/IPやプロトコル、ネットワーク機器の用語が大幅に追加されています。

ハードウェア(3語)

コンピュータ・入出力装置の基礎用語が追加されています。

基礎理論(13語)

離散数学やAI理論の基礎用語が追加されました。

情報デザイン(18語)

UI/UXやWebデザインに関する用語が追加されました。

情報メディア(28語)

マルチメディア技術や画像・音声処理の用語が追加されています。

技術要素(3語)

新しいテクノロジ(1語)

新しい技術(8語)

注目の新用語ピックアップ

新用語450語の中から、特に注目すべきトレンド分野の代表的な用語をピックアップして解説します。

AI・機械学習分野

生成AIの普及に伴い、AI関連の用語が大幅に拡充されました。AIの仕組みだけでなく、ハルシネーション(誤生成)やプロンプトインジェクション(攻撃手法)など、社会的・安全面の理解も求められています。

AI(人工知能)

コンピュータに人間のような知的な情報処理を行わせる技術の総称。

AIOps

AI(人工知能)を活用して、ITシステムの運用業務を自動化・効率化する手法や技術。

AIによる自動化

AIの判断力を活用して、従来は人間が行っていた高度な業務や定型作業を自動化すること。

AI・データの利用に関する契約ガイドライン

システム企画分野における指針や基準を示した文書。

AI利用者の関与によるバイアス

利用者の指示(プロンプト)やフィードバックによって、AIの回答に偏りが生じること。

セキュリティ分野

ファイルレスマルウェアやパスワードリスト攻撃など、近年増加している攻撃手法の用語が追加されています。防御側ではパスワードレス認証やディスク暗号化が新たな重要用語です。

IoTセキュリティガイドライン

IoT機器の開発・利用において、特有の脅威や対策をまとめた政府の指針。

MITB (Man-in-the-browser)攻撃

ブラウザに感染したマルウェアが、ユーザーの入力内容を通信直前に改ざんする攻撃。

セキュリティケーブル

ノートPCや周辺機器をデスクなどに固定し、物理的な持ち出しや盗難を防ぐためのワイヤー。

ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出制度

ソフトウェア等のセキュリティ上の欠陥(脆弱性)を発見した際、IPAに届け出る制度。

ディスク暗号化

HDDやSSDなどの記憶装置全体を暗号化し、盗難時のデータ読み取りを防ぐ技術。

DX・ビジネス変革分野

DX推進に関連する制度や概念が拡充されています。GX(グリーントランスフォーメーション)やインボイス制度など、ビジネスと社会制度の接点にある用語が注目されます。

GX推進法

GX推進について定めた法律。

GX(グリーントランスフォーメーション)

化石燃料からクリーンエネルギー中心の経済構造へ転換し、産業競争力を高める変革。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)

消費税の「仕入税額控除」を受けるために、国が指定した形式の請求書(インボイス)を保存する制度。

デジタルガバナンス・コード

企業の経営者が、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために実践すべき指針をまとめたもの。

デジタルガバメント

ITを駆使して行政のあり方そのものを変革し、国民の利便性向上と行政の効率化を目指す政府の形態。

データ活用分野

データサイエンスの基礎となるデータの種類(1次/2次データ、構造化/非構造化データ等)や分析手法の用語が追加されています。

1次データ

1次的な特徴を持つデータの分類・形式。

2次データ

2次的な特徴を持つデータの分類・形式。

AI・データの利用に関する契約ガイドライン

システム企画分野における指針や基準を示した文書。

クロスセクションデータ

クロスセクション的な特徴を持つデータの分類・形式。

シミュレーションのデータ同化

数値モデルによるシミュレーション結果と、実際の観測データを組み合わせて予測精度を高める手法。

新技術分野

メタバースやNFTなど、次世代技術に関する用語が試験範囲に含まれています。

NFT(非代替性トークン)

を用いて、デジタルデータに「偽造不可能な鑑定書・所有証明書」を付与したもの。替えの利かない唯一無二の資産。

メタバース

コンピュータネットワークの中に構築された、多人数が自由に行動・交流できる3次元の仮想空間。

受験者向け学習アドバイス

シラバス改訂で追加された新用語は、今後の試験で出題される可能性が高い分野です。効率的に学習するためのポイントを整理します。

1. 新用語のほとんどは「まだ出ていない」用語

新用語450語のうち、過去の試験で出題実績がないものは430語にのぼります。これは全体の96%に相当し、過去問演習だけでは対策が不十分であることを示しています。シラバスの用語例を直接チェックし、各用語の意味を押さえておくことが有効です。

2. 分類を活用した優先順位

用語辞書では全2,651語を4段階に分類しています。

分類用語数学習優先度
★最重要73語最優先で学習。出題頻度が高い核心用語
◆重要926語合格に必要な重要用語。確実に押さえたい
▲旧重要81語旧シラバスで重要だった用語。余裕があれば
△旧用語1,571語関連知識として参考に。直接の出題可能性は低い

まずは★最重要73語を完璧にし、次に◆重要926語へ広げていく戦略が効率的です。

3. カテゴリ別の学習戦略

テクノロジ系は新用語が204語と多い分野です。まずは各用語の「意味」を正しく理解することを優先しましょう。深い技術的理解よりも、用語と概念の対応関係をつかむことが重要です。

ストラテジ系は207語の新用語があります。ビジネスやDX関連が中心なので、ニュースや実際のビジネス事例と結びつけて覚えると定着しやすくなります。

マネジメント系は39語と比較的少数ですが、プロジェクトマネジメントやITILの基本フレームワークを把握した上で整理すると効率的です。

シラバスVer.6.5対応 ITパスポート学習アプリ

本記事で分析した2,651語すべてを収録した学習アプリ「瞬即マスター ITパスポート」。全機能を7日間無料で体験できます。

  • 用語辞書 2,651語(新用語758語含む)
  • 過去問 28回分のテキスト問題 2,301問(無料)
    ※ 図表付き問題(491問)は今後対応予定
  • 学習ステージ 232ステージ
  • 計算問題 23トピック
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まとめ

シラバスVer.6.5では、AI・機械学習、情報セキュリティ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の3分野を中心に大幅な用語追加が行われました。2,651語の辞書データベースのうち、Ver.6.5現行掲載の新用語は450語です。

これらの新用語は過去問にまだ出ていないものがほとんどであり、今後の試験で出題される可能性が高い領域です。本記事のカテゴリ別一覧を参考に、★最重要・◆重要の用語から優先的に学習を進めてください。